兵庫・姫路市の針灸治療院 山下針灸房
針灸房コラム

着床前診断と鍼灸施術

着床前診断と鍼灸施術

当院にお越しなられた方々の中に、着床前診断をうけられた方が5名(相互転座2名を含む)おられます。その報告をさせていただきたいと思います。
 

その前に、着床前診断(ちゃくしょうまえしんだん、ちゃくしょうぜんしんだんともいいます)とは、体外受精で移植をおこなう前の段階で胚盤胞というという卵の染色体や遺伝子の異常をしらべる医療技術です。
 

当院におこしになられる経過は、「着床前診断をするから鍼灸を受けたいのです」という方はいまだおらません。
 

当院に来院されるきっかけとしては「胚盤胞が育たない」とか「何度移植してもうまくいかない」というお悩みを持たたれて「まず、良い卵を育てたい」と思われての来院となります。
 

針灸房が感じている着床前診断のメリットとデメリット

 

メリット
1. 妊娠率が上がる。
2. 移植回数が減る。
3. 赤ちゃんへの不安が減少する。
 

デメリット

1. 胚盤胞まで育て上げないと検査ができない。
2. 費用がかかりすぎる。
3. 夫婦間のデリケートな部分がわかることもある。
 

針灸房では、デメリットはあるものの、メリットの方が多いように思います。何度も移植をして結果のでない方、すぐに流産をしてしまう方で不育検査、着床不全の方には良い方法かもしれません。
 
がしかし、胚盤胞にまで育て上げないと検査ができない。これが非常にネックになる方も多くおられます。
 

あるクライアントさんは「検査をしても正常胚ができない」と悩まれています。でも、よく考えてみると、胚盤胞が育たず苦労をされている方がたくさんおられます。着床前診断できる環境におられるのもラッキーなのかもしれません。針灸房の地元では対応している施設はありません。当院のクライアント様も遠方の施設に1時間以上かけて通院されています。
 

どれくらい遺伝子異常がおこるのか?

ハイエイジのクラアントさんは、胚盤胞にまで育ちにくい、でも染色体異常が年齢とともに上昇していくとジレンマに陥ってしまします。
 

年齢別に遺伝子異常が生じる割合は以下の論文で発表をされています。
 

34歳以下の方で59%、35~39歳の方で63%、40歳以上の方で74%(Munne et al. 1995, Marquez et al. 2000)
 

これを、正常胚獲得率に置き換えてみると表のようになります。
 

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正常胚獲得率

40歳以上方の正常胚獲得率は多いように思われますが、胚盤胞まで成長し検査したものの中での数値となります。
 

胚盤胞まで育ち可能であれば、40歳以上の方は不育検査・着床不全の検査・着床前診断を行って移植をするのが最短の方法かもしれません。
 

当院の実績

 

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当院の実績を説明させていただきます。
2016年10月~2018年8月までの間に育卵鍼灸でサポートを行い、6名の方が着床前診断を受けて正常胚を獲得されました。
 

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妊娠数

4名の方が移植に挑まれ3名の方が妊娠されております。
3名のうち1名は女性サイドの遺伝子相互転座をおもちの為に2回目の移植で妊娠出産にいたっております。
妊娠数は3名、流産はなく、出産にいたっております。あとのお一人は1回の移植で終了されています。

A様(42歳)

当院来院後、移植をするが結果は出ずに、最後に4つの胚盤胞で1個の正常胚で移植を試みるが、陰性で妊活終了。
 

B様(39歳)

「正常胚を移植しても妊娠しない」そして、採卵ができなくなってきたと悩まれてのご来院。
4か月間の育卵鍼灸で2回目の検査にて正常胚獲得、着床鍼灸にて妊娠、出産にいたる。
 

C様(37歳)

「採卵ができなくなってきた」と悩まれてのご来院。
詳しくカウンセリングを行っていくと、ご自身の遺伝子相互転座があり、2施設にて8個の胚盤胞から2つの正常胚を獲得するが、妊娠反応はでるものの化学流産、流産と結果が出ず、更に採卵数も減り胚盤胞のまで育たなくなってきた。
当院にて6か月の育卵鍼灸のサポートを行い、4個の胚盤胞を育て上げ、2個の正常胚と1個モザイク胚を獲得する。着床鍼灸にて2度目の移植で妊娠出産にいたる。
 

D様(36歳)

妊活で当院にご来院、人工授精(AIH)、体外受精とステップアップをして妊娠するが、のちに流産となる。一時来院を中断した後、2度の移植を試みるが結果が出ず、採卵ができなくなり、当院に再来院。
その後、転院し着床前診断をおこなう。
初回は、モザイク胚のみ獲得なり、培養士より、「モザイク体質かもしれないので、モザイク胚がつづくようなら」とコメントをいただくが、3回に分けて10胚盤胞から3個の正常胚と4個のモザイク胚を獲得する。1度目の移植で妊娠出産にいたる。

 

E様(37歳)

妊活で当院に来院、ステップアップをして体外受精にいたってしまう。4回の移植中にTh1/Th2比異常の対策を行っても結果が出ず、残りの胚盤胞で着床前診断を行い、夫の相互転座がわかる。
夫(41歳)の男性不妊の鍼灸施術を3か月間、採卵検査と並行して行い、10胚盤胞から3個の正常胚と1個のモザイク胚を獲得、次回の移植に向けて準備中である。
 

F様(40歳)

「何度も移植をしても妊娠反応がでない」と悩まれてのご来院。当院の着床鍼灸をうけられて移植を5回試みるが結果が出ず。次回の採卵を期に、転院し着床前診断を行う。2回にわたり6個の胚盤胞から1個の正常胚を獲得する。さらに正常胚獲得のために育卵鍼灸を継続中である。
 

考察

現在のところ、当院に通院中のクライアント様はすべて正常胚を獲得されています。
 

特に注目できるのは、男性サイドの相互転座であっても、造精期間中に鍼灸施術を継続して行うと、右上がりに胚盤胞の状態がよくなっていくところである。さらにこのカップルは受精卵培養にタイムラプスを利用されており、成長過程が事細かに観察できたところである。
 

今後、タイムラプスの使用が初期胚であっても妊娠率を上げる突破口になるかもしれません。
 

男性サイド、女性サイドからの遺伝子相互転座のクライアント様が、当院の鍼灸のサポートで正常胚が獲得できたのは非常にうれしいものである。
 

不妊治療のサポートで、胚盤胞まで育て上げる、正常胚を獲得するために鍼灸施術が有益なものの一つとして考えられる。
 

今回、症例数が少ないにも関わらず掲載に至ったのは、先日一般社団法人JISRM(日本生殖鍼灸標準化機関)の中村一徳会長より、当院の鍼灸施術(育卵鍼灸・着床鍼灸)でサポートをした着床前診断の実績を求められたことに端を発します。


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