水いぼ ~傷寒論~

『新古方薬嚢 よく苡仁』



民間療法ではハトムギがよく使われています

ハトムギに含まれている成分コイクノライドという成分がイボ取り治療に効果があるとして、皮膚科でも内服薬治療のひとつとして患者に処方することがあります。

傷寒論での方剤を考えてみます。

麻黄杏仁苡甘草湯
よく苡附子散
よく苡附子敗醤散
桂枝茯苓丸
当帰芍薬散
などの方剤がベースとなっています。

皮膚の潤うように目標をしています。臨床的には桂枝茯苓丸・当帰芍薬散にも苡仁を加えて使われているケースが多いです。

では鍼灸のツボをどのように使うか
 外関、手の十井穴、三里、陰陵泉、豊隆、上巨虚、三陰交、後溪、太衝、肝兪、心兪、厥陰兪などを適宜選んで使っていきます。

参考文献:『新古方薬嚢』荒木性次著

よく苡仁

 効用 本経に曰く苡仁味甘徴寒、筋急拘攣して屈伸すべからずや風湿痺を主どり気を下し久服すれば身を軽くし気を益す、其根は三蟲を下すと。
 薬徴に曰くよく苡仁主治浮腫なりと。ボク曰くよく苡仁味甘徽寒、急を緩め熱を消し和を致すの効あり、故に胸痺、肺癰、風湿、腸癰等に用ひらる。又イボ()をとるの効ありと言はる。

よくよく苡仁を配伍したる薬方

よく苡附子敗醤散 金匱要略方第十八瘡癰腸癰浸淫篇に在り
252-3 腸廱之為病、其身甲錯、腹皮急、按之濡如腫状、腹無積聚、身無熱、脈数、此為腹内有廱膿、よく苡附子敗醤散主之。
《よく苡附子敗醤散方》よく苡仁2.5 附子0.5 敗醤3.25
 上三味を杵いて粉末となし、2.0を取り水四勺を以て半量に煮つめ頓服す.

苡附子敗醤散の証

 腹の中に病あり。其の為皮膚に油気が無くなり、ガサガサとし、腹の皮はひっつれた様に張りて見ゆれども指にて之を押せば案外に軽く、むくみの様な感じがし、腹の中に別にしこりや、痛み動くものもなく、身體に熱が無いのに脈だけは早いと言ふのが本方の正証なり。然も斯くの如き証侯と脉状とある者は必ず腸の内に癰膿が有ると言ふ事なり。此証は身には熱の現れたるものなけれども伏熱と言ひて腸の中に熱あるなり。故に苡仁を多く用ひて之を治するなり。
 若し苡附子敗醤散を試みんと欲する時は先づ最初は一回量を三回分位にして与ふるが安全なり。

よく苡附子散 金匱要略方第九胸痺心痛短気篇に在り

211-7 胸痺緩急者、よく苡附子散主之。
《苡附子散方》よく苡仁15.0 大附子3.0
右二味、杵為散、服方寸匕、日三服。
 上2味を杵いて散となし、一回に2.0宛三日三回服用すべし。本散も之を試みんとする時は先づ1回量を6回分位に則ち3回分の6分の3量位を1回に与ふべし、或は十分の一量位より始むるを安全となす。

よく苡附子散の証
胸中に痛みありて息苦しき状態が時々発作する者、皮膚方サガサする者、或はさむけ劇しき者等を考へ合せて用ふべし。

 麻黄杏仁よく苡甘草湯 金匱要略方第二けい湿かつ篇に在り

186-22 病者一身尽疼、発熱、日ぽ所劇者、名風湿。此病傷於汗出当風、或久傷取冷所致也。可与麻黄杏仁よく苡甘草湯。
《麻黄杏仁苡甘草湯方》麻黄去節0.5 甘草1炙 よく苡仁0.5 杏仁0.5箇去皮尖炒
 右麻豆大、毎服四銭匕、水盞半、煮八分、去滓温服、有微汗、避風。
上四味を細かに刻み相混じ、1回に4gまでを水三勺を以て二勺に煮つめ、滓を去り温服すべし本方を服すれば必ず少し汗出づべし。故によく病人を覆ふて風に当ることを避けしむべし。

麻黄杏仁意苡甘草湯を用ふる証

 欠く冷える処に居たり、冷える仕事をしたり、又は薄着して汗をうんとかく程の仕事を永くしたりした為、身體中が疼痛し特に午後の三時か四時頃になると疼痛も一段強きを加え、熱も出て来ると言ふ者、冷えから起ると言ふが本方の行く処の根本たり。

桂枝茯苓丸 金匱要略方第二一十婦人妊娠病篇に在り

256-2 婦人宿有ちょう病、経断未及三月、面得漏下不止、胎動在臍上者、為ちょう痼害。妊娠六月動者、前三月経水利時、胎也。下血者、後断三月じゅつ也。所以血不止者、其ちょう不去故也、当下其ちょう、桂枝茯苓丸主之。
  方 桂枝 茯苓 牡丹 桃仁 芍薬各等分
上五味を未となしよく混和し煉蜜を以て1.5gの丸となし毎日食前に一丸宛服用すべし、一日三回。

桂枝茯苓丸を用ふる証
 婦人妊娠して二三ヶ月頃に至り出血ありて腹に動悸ある者、平常鼻血など出易き者、のぼせ性にて顔紅く手足冷ゆる者、肩張る者、所謂血症にて顔に紅味多き者に本方のゆく所多くあり。

当帰芍薬散 金匱要略方第二十婦人妊娠篇第二十二婦人雑病篇に在り

257-5 婦人懐妊腹中きゅう痛、当帰芍薬散主之。
266-17 婦人腹中諸疾痛、当帰芍薬散主之。
  方 当帰3.0 芍薬6.0 茯苓4.0 白朮4.0 澤瀉8.0 川きゅう8.0
 上六味を粉末となし、合して散を作り一回二グラム宛小盃一杯の清酒に混じ服用すべし、一日三回食前一時間。

当帰芍薬散を用ふるの証
 何と言っても本方のゆく所は腹痛にあり。猛烈に痛む者あり、割合軽き者あり、本方証の病人は絶別顔色悪し。冷え性多し。便通は大抵普通か又は下利し易き者多し。便秘の者には軽々しく用ふべからずと、是は先師より授けられたる秘訣なり。之を実際に試むるに違ふ事少なし。本方は金匱要略産前病の中に在り。